■クリスマス・ツリーの起源

 クリスマス・ツリーには一般には「 モミの若木 」が用いられます。ここで言う「モミ」とは正確には「欧州モミ」「ヨーロッパモミ」と呼ばれる樹木を指します。標準和名を「モミ 」と呼ぶ樹木は 本邦に特産の Abies firma です。欧州キリスト教文化が日本に持ち込まれたとき、「欧州モミ」と同属である「 もみの木 」が日本産のクリスマスツリーとして用いられることになりました。 クリスマスを祝うのは欧州キリスト教文化圏の習慣ですが、「クリスマスツリー」の起源はキリスト教の成立以前に求めることができます。
 古来、欧州ではモミの木は神聖な木として民間信仰の対象とされてきました。古代ローマではモミ材の船を建造したため、この木を海神 ネプチューン (Neptune、ギリシア神話の「 ポセイドン (Poseidon)」にあたる)に捧げました。内陸のゲルマン民族は四季を通じて緑の葉を付けるモミを「 闇 」と「 死 」と「 寒さ 」の支配する冬の森にあって「 希望 」と「 堅実さ 」の象徴として崇拝しました。 また、ドイツの多くの地域では民族に関係なく、モミの枝を戸口や寝室、穀物小舎、家畜小舎に飾り、 悪霊除け とする風習があり、現在でも クリスマスとは無関係に この習慣が続いているそうです。
 ドイツ中部の山岳地帯では モミの木に住む小人 が木に留まり村に良事を為すという信仰から、花や卵、蝋燭の明かりなどをこの木に飾りその周囲を踊りまわる祭がありました。これが クリスマス・ツリーの起源 と考えられています。この小人が サンタ・クロース に変形したと言われています。

「もみの木」分類と名称
マツ科  Family Pinaceae
モミ亜科 Subfamily Abietoedeae
モミ属  Genus Abies Mill.
和 名  モミ(樅、椴)
別 名  モムノキ(古語)
     オミノキ(古語、「臣の木」の意)
     サナギ、トウモミ、モミソ

分布
本邦に特産。岩手県、山形県以西、四国、九州屋久島まで。適潤な肥沃地を好み、丘陵地や山地に自生するほか、庭園樹や公園樹、建材用などとして植栽されています。

特徴
常緑針葉高木で陰樹です。樹齢は短く100〜150年ほど。 大気汚染に弱い。 幹は直立し、高さ30〜50m、直径1m以上に達します。 樹皮は灰白色〜灰褐色で老木では鱗片状に剥離します。 太枝をやや斜下にまっすぐ伸ばして広円錐状の美しい樹形で、葉は線形で長さ1〜3cm、幅2〜3mmで密に互生します。若木や不定芽につく葉は先端が2裂し、老枝につくものは丸みを帯びて僅かに凹形です。表面は濃緑色で光沢が有り、若い葉の裏面には2条の白色の気孔線を認められます。樹脂道は2個。 雌雄同株。 花期は5〜6月頃で前年生枝の枝上に直立して 黄緑色の雌花 をつけ、 秋には緑褐色の狭卵状円錐形、長さ9〜15cmの球果をつけます。球果は短柄を伴います。 長い翼を持つ種子が種鱗の内側に2個づつ付き、種鱗は半円形、包鱗は線状披針形で鋭尖頭を成し、種鱗の間から飛び出すが反曲しません。

その他
季題は「春」 花言葉は「高くそびえる」「向上」(日本)、「時間」(英国)です。